遺族基礎年金や遺族厚生年金申請について
文責 社会保険労務士 松井 宝史 2022.09.19
遺族年金申請について
大事な方が亡くなった時の遺族のための給付は何があるのでしょうか?
公的年金加入者または加入していたことがある人が死亡した場合、遺族となった、子のある配偶者または子に対して遺族基礎年金が支給されます。
また、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった人が死亡した場合、遺族となった、子のある配偶者または子の他、遺族となったその他の遺族にも遺族厚生年金が支給されます。
一方、自営業者等の国民年金の第1号被保険者または第1号被保険者であった人が死亡した場合、遺族基礎年金が支給されないその他の遺族に対して、寡婦年金または死亡一時金が支給されます。
このサイトでは、遺族年金について分かりやすく解説をしていきたいと思います。
遺族年金の受給要件
公的年金加入者または加入したことがある人が死亡した場合、遺族となった、子のある配偶者または子に対して遺族基礎年金が支給されます。
また、厚生年金保険の被保険者または被保険者であった人が死亡した場合、遺族となった、子のある配偶者または子のほか、遺族となった他の遺族にも遺族厚生年金が支給されます。
自営業者等の国民年金の第1号被保険者または第1号被保険者であった人が死亡した場合、遺族基礎年金が支給されないその他の遺族に対して、寡婦年金または死亡一時金が支給されます。
遺族の種類と受けられる遺族年金
遺族の種類 | 国民年金のみに加入 |
厚生年金保険に加入 |
子のある配偶者 |
遺族基礎年金 |
遺族基礎年金+遺族厚生年金 |
子 |
遺族基礎年金 |
遺族基礎年金+遺族厚生年金 |
ぞの他の遺族 |
寡婦年金または死亡一時金 |
遺族厚生年金 |
寡婦年金と死亡一時金は第1号被保険者が死亡した場合のみ支給されます。
遺族基礎年金を受ける条件とは
遺族基礎年金は、被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間を満たした人などが死亡したときに、その人の子のある配偶者または子が受給することができます。
被保険者が死亡したときは、被保険者期間のうち、保険料が一定期間納めている必要があります。
その条件は、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算して3分の2以上あることです。
また、死亡日が令和8年3月31日までにあるときは、直近の1年間に滞納がなければ大丈夫です。
◎遺族基礎年金を受ける条件
遺族基礎年金は、次の①~④に該当する人が死亡したときに、その人の子のある配偶者または子が受給できます。
①国民年金の被保険者であること
②国民年金の被保険者であった人で、日本国内に住所があり、60歳以上65歳未満であること
③老齢基礎年金の受給権者(加入期間が25年以上)であること
④老齢基礎年金の受給資格期間(25年以上)を満たした人であること
遺族基礎年金を受けられる遺族は誰か
遺族基礎年金の受給権者(もらえる人)は、死亡した当時、亡くなった人により生計を維持されていた次に該当する配偶者または子です。
①死亡した人の配偶者で、子(18歳到達年度の末日までにある子、または1級・2級の障害の状態にあるときは20歳未満の子)と生計を同じくしている人
②死亡した人の子(18再到達年度の末日までにある子、または1級・2級の障害の状態にあるときは20歳未満の子)
年金機能強化法により、平成26年4月から子のある夫も老齢基礎年金が受けられるようになりました。
尚、夫が遺族基礎年金を受けられるのは、配偶者が平成26年4月1日以後に死亡した場合です。
遺族基礎年金の失権
遺族基礎年金を受けている人が、次のいずれかに該当すると、遺族基礎年金を受ける権利がなくなります。
つまり、遺族基礎年金がもらえなくなります。
①死亡したとき
②婚姻したとき(事実婚を含む)
③直系血族または直系姻族以外の養子となったとき(事実上の養子縁組を含む)
◎配偶者が受けている遺族基礎年金の失権
上記のほか、すべての子が次のいずれかに該当すると、受ける権利がなくなります。
④死亡したとき
⑤婚姻したとき(事実婚を含む)
⑥死亡者の配偶者以外の養子となったとき(事実上の養子縁組を含む)
⑦養子縁組により故人の養子となっていた子が、離縁したとき
⑧死亡者の配偶者と生計を同じくしなくなったとき
⑨18歳到達年度の末日を終了したとき(1級・2級の障害の状態にある場合を含む)
⑩1級・2級の障害の状態にある子が、その状態がやんだとき(18歳到達年度の末日までにあるときを除く)
⑪1級・2級の障害の状態にある子が20歳になったとき
◎子が受けている遺族基礎年金の失権
上記①~③のほか、⑦、⑨、⑩、⑪のいずれかに該当すると、受ける権利がなくなります。
※配偶者が受けている遺族基礎年金は子の数に増減があったときに、子の受けている遺族基礎年金は受けられる子の数に増減があったときに、それぞれ増減のあった日の翌月から年金額が改定されます。
遺族厚生年金を受ける条件は
遺族厚生年金は、次のいずれかの場合に、死亡した人の遺族に支給されます。
①厚生年金保険の被保険者が死亡したとき
②厚生年金保険の被保険者であった間に初診日のある傷病がもとで初診日から5年以内に死亡したとき
③1級・2級の障害厚生年金を受けられる人が死亡したとき
④老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たした人(いずれも加入期間25年以上)が死亡したとき
①または②に該当する場合は、一定の保険料納付要件を満たしていることが必要です。
なお、遺族厚生年金は、遺族が子のある配偶者または子の場合は、遺族基礎年金に上乗せして受給できます。
子のない配偶者、父母などの場合は、遺族厚生年金を独自に受給できます。
遺族厚生年金を受けられる遺族
遺族厚生年金を受けられる遺族の範囲は、死亡した人に生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫または祖父母で、妻以外の遺族については年齢等の条件があります。
これらの遺族のうち、子のある配偶者および子は、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給できます。子のない配偶者、父母、孫または祖父母は遺族厚生年金を受けます。
◎年齢要件他
①妻(事実婚であってもよい)の場合…年齢に関係なく受給できます
②夫(事実婚であってもよい)、父母、祖父母の場合…死亡したとき55歳以上であるとき。なお、受給開始は60歳になってからです。
遺族基礎年金を受けられる夫は、60歳前でも遺族厚生年金を受けられます。
被保険者等が平成8年3月以前に死亡した場合には、これらの遺族が1級または2級の障害の状態であれば、55歳未満であっても経過的に支給されます。
③子・孫の場合…死亡したときに18歳到達年度の末日までの間にあるとき。または20歳未満で1級または2級の障害の状態にあるとき。
遺族厚生年金を受けられる順位は
①配偶者と子
②父母(配偶者も子もいない場合)
③孫(配偶者も子も父母もいない場合)
④祖父母(さらに孫もいない場合)
なお、①の配偶者または子が遺族厚生年金を受けることになると、②以下の人は遺族給付を受けられません。
同様に②の父母が受けると③以下の人が、受けられません。③の孫が受けると④の人は受けられません。
また、配偶者と子の場合を除いて、先の順位の人が年金を受けられなくなっても後の順位の人が年金を受けること(転給といいます)もできません。
遺族基礎年金を受けられる遺族が妻から配偶者に変わったことにより、遺族年金を受ける妻、夫と子の関係は、①遺族基礎年金は配偶者(妻・夫)が優先です。
②遺族厚生年金は配偶者(妻・夫)が優先するが、配偶者(妻・夫)に遺族基礎年金の受給権がなく子に遺族基礎年金の受給権がある場合は子が優先となります。
◎厚生年金基金に加入している場合
厚生年金基金は老齢厚生年金の一部(代行部分)を国に代わって支給していますが、厚生年金基金に加入している人が死亡しても、遺族厚生年金は日本年金機構から支給されます。
ただし、基金独自に遺族一時金などを支給する場合もあります。
遺族厚生年金の失権
遺族厚生年金を受けている人が、次のいずれかに該当すると、遺族厚生年金を受ける権利がなくなります。
①死亡したとき
②婚姻したとき(事実婚を含む)
③直系血族または直系姻族以外の養子となったとき(事実上の養子縁組を含む)
④養子縁組により故人の養子または養親となっていた人が、離縁したとき
⑤次のア、イの日から5年を経過したとき
ア 30歳未満の子のない妻が、遺族厚生年金の受給権を取得した日
イ 子のある妻が、30歳になるまでに遺族基礎年金を受けられなくなった日
⑥子または孫が18歳到達年度の末日を終了したとき
⑦1級・2級の障害の状態にある子または孫が、20歳未満でその状態がやんだとき、または20歳になったとき
妻または夫以外の人が受けている遺族厚生年金は、受けている人の数に増減があったときに、増減のあった日の翌月から年金額が改定されます。
離婚・再婚・離縁した場合
死亡した被保険者等の血族を伴って、離婚した妻の場合、遺族基礎年金の受給権は発生しませんが、死亡した人からその子についての養育費の送金が継続して行われるなど、死亡した人と子についての生計維持関係が認められる場合には、子に受給権が発生します。
上記と同様の場合で、さらに死亡した被保険者等が再婚していて、後妻との間に子があった場合には、後妻、先妻の子および後妻の子に受給権が発生し、先妻の子および後妻の子は支給停止の扱いとなります。
ただし、後妻の子は後妻の遺族基礎年金の加算額の対象者となります。
また上記の後妻が何らかの事由で遺族基礎年金の受給権を失った場合、先妻・後妻の両方の子について支給停止が解除されて受給できることになります。
被保険者等が再婚し、先妻の子と後妻とが生計を同じくする前に死亡した場合には、子に受給権が発生し、妻には受給権が発生しません。
遺族基礎年金の受給権のある子のある妻が再婚した場合、妻はその受給権を失いますが、子は受給権を失いません。
この場合、子が再婚した妻の夫の養子となったとしても、子は直系姻族の養子となるため、受給権を失わないことになっています。
上記すべての場合にも、子に支給される遺族基礎年金は、生計を同じくするその子の父または母がいる場合、支給停止されることになっています。
※夫の場合は、上記の「妻」は「夫」と読み替えてください。
子について
現に婚姻をしている子については、遺族基礎年金を受けられる遺族の①、②および遺族厚生年金を受けられる遺族の③に該当する子として扱われません。
死亡した当時、胎児であった子が出生したときには、その子は死亡当時、死亡した人によって生計を維持していたものとみなし、妻は死亡当時、その子と生計を同じくしていたものとみなされます。
胎児は、出生のときに遺族とみなされます。
経過的寡婦加算
妻が65歳になり、遺族厚生年金と老齢基礎年金の2つの年金を受けられるようになると、それまで遺族厚生年金に加算されていた中高齢の寡婦加算は行われないことになります。
それに替わって、経過的寡婦加算が受けられるようになります。
昭和61年4月1日に30歳以上であった昭和31年4月1日以前に生まれた遺族厚生年金の受給権者である妻が65歳に達したとき、それまで加算されていた中高齢寡婦加算に代えて加算されます。
経過的寡婦加算額=中高齢の加算額-老齢基礎年金×寡婦の生年月日に応じた乗率
令和2年度価額で
昭和2年4月1日以前生まれの人は、586,300円で昭和31年4月2日以後生まれの人は、支給されません。
尚、65歳以降にはじめて遺族厚生年金の受給権が発生した昭和31年4月1日以前生まれの妻についても経過的寡婦加算が加算されます。
条件としては、長期要件に該当する遺族厚生年金では死亡した夫の被保険者期間が20年(中高齢の特例含む)以上なければ加算されません。